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同一労働同一賃金を検討する際の4つのステップ

2019.09.26

働き方改革関連法により、パートタイム・有期雇用労働法が改正され、2020年4月から、正社員と非正規社員との間の不合理な待遇差が禁止されます(中小企業は2021年4月から適用)。同一労働同一賃金と表現されますが、現実には企業内の正社員と非正規社員の間の均等・均衡処遇を目指す改正というのが本旨であり、その対応実務としては、正社員と非正規社員の現状の待遇を比較し、不合理な待遇差があるときには解消することが求められるものになります。労働者の待遇は各企業で決定するものであり、各企業での対応が必要になるため、ここでは厚生労働省が作成したパンフレット「不合理な待遇差解消のための点検・検討マニュアル(業界共通編)」を参考に、同一労働同一賃金の対応の4つのステップを確認します。

第1段階:社員タイプ等の現状・「均等待遇」、
「均衡待遇」の対象となる労働者の確認

  • 現状の社員タイプの整理

    同一労働同一賃金への対応に当たっては、自社内での労働者の処遇の差異を比較することになるため、自社で雇用する労働者の社員タイプを整理し、パートタイム・有期雇用労働法の対象となる労働者(以下、「取組対象労働者」という)がいるかどうかを確認します。正社員のほかにも、契約社員、嘱託社員、準社員、パートタイマー、アルバイト、臨時社員等、様々な名称により社員タイプを区分している企業は多く、このような場合には、取組対象労働者がいるかを確認するために、「労働契約期間の定め」と「1週間の所定労働時間」の2つの観点により、図表1のように整理します。

    その上で、不合理な待遇差があるかを検証するために、取組対象労働者と比較する労働者(以下、「比較対象労働者」といいます。)を確認します。  比較対象労働者は、パートタイム・有期雇用労働法では図表1の通常の労働者とされ、いわゆる「正規型」の労働者および期間の定めのない労働契約を締結しているフルタイム労働者のすべてが該当します。

  • 「均等待遇」、「均衡待遇」の対象となる労働者の確認

    1.に引き続き、取組対象労働者が図表2の均等待遇または均衡待遇のいずれの対象となるかを判断する必要があります。取組対象労働者がいずれに区分されるかは、「職務の内容(業務の内容及び責任の程度)」、「職務の内容・配置の変更の範囲」を通常の労働者と比較して決まります。図表2 に示すように職務の内容、職務の内容・配置の変更の範囲の両方が通常の労働者と同じ場合には均等待遇の対象、それ以外の場合には均衡待遇の対象になります。

第2段階:社員タイプごとの待遇の現状の整理と、待遇の違いの確認

待遇差を確認するときは、社員タイプごとに個々の待遇を比較し、比較対象労働者との間で「適用の有無」、「決定基準」に違いがあるかを確認します。そのため、第2段階では個々の待遇について取組対象労働者を支給対象としているかという待遇の適用の有無と、個々の待遇をどのような基準で決定し、その基準が取組対象労働者と比較対象労働者とで同じかを社員タイプごとに整理・確認します。
具体的には、図表3のような待遇ごとの比較表を作成し、現状での待遇差を明らかにすることが考えられます(図表はクリックすると拡大されます)。

第3段階:待遇の「違い」が不合理か否かを点検・検討する

  • 均等待遇が求められる場合

    取組対象労働者が均等待遇と整理された場合は、その取組対象労働者は、すべての待遇(手当、福利厚生、教育訓練、安全管理、賞与、基本給等)について、差別的取扱いが禁止され、比較対象労働者と同じ取扱いにすることが義務付けられます。異なる取扱いをしている場合には速やかに比較対象労働者と同じ取扱いにするための検討を行う必要があります。

  • 均衡待遇が求められる場合(不合理な待遇差を判断する方法)

    均衡待遇と整理された場合で、取組対象労働者の待遇と比較対象労働者の待遇に違いがある場合、その違いが不合理な待遇差である場合に問題となります。そのため、不合理な待遇差であるかを詳細に点検・検討する必要があります。
    そのときには、個々の待遇ごとに、「職務の内容」、「職務の内容・配置の変更の範囲」、「その他の事情」の3つの考慮要素のうち、待遇の性質や目的に照らして適切と認められるものを考慮して判断するとされています。このうち「その他の事情」とは、個々の状況に合わせてその都度検討します。成果、能力、経験、合理的な労使の慣行、労使交渉の経緯はその他の事情として想定されています。

第4段階:是正策を検討する

第3段階において、比較対象労働者と取組対象労働者との間の待遇差が不合理ではないとはいえない待遇については、是正を行うことが求められます。具体的には、以下の流れに沿って検討することが考えられます。

  • 是正が必要な待遇について、その待遇の性質や目的に応じた考慮要素に基づき、例えば取組対象労働者に支給していなかった手当を、今後は比較対象労働者との責任の違いに応じた支給額を支給するといった対応方針を定める。同時に、待遇改善に向けた原資の確保についても検討する。
  • a.で定めた対応方針について、労働組合または従業員の過半数を代表する従業員と話し合いを行い、合意を得る。
  • 合意内容に基づき、各種規程を改定し、労働者に周知する。

 例えば、上記で1位となった項目の心理的負荷の評価をみてみると、以下のようになっています。

この待遇の是正に当たっては、是正を行うために検討しなければならない事項や必要な手続を事前に洗い出し、計画的に進めることが求められます。また、一定の期間が必要になりますので、早めの対応が求められます。

今回、同一労働同一賃金への対応が求められる非正規労働者には、派遣労働者も含まれています。派遣労働者は、企業規模に関わらず2020年4月から適用され、対応法も異なります。派遣労働者を受け入れている企業では、派遣会社の方針を確認し、必要な対応を進めるようにしましょう。

参考リンク

厚生労働省「同一労働同一賃金特集ページ」

※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。