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今春より適用となる時間外労働の上限規制への対応

2019.01.24

 

今春より順次施行される働き方改革関連法のうち、時間外労働の上限規制は大企業が今年4月1日、中小企業は2020年4月1日に施行されます。2018年9月に法律の詳細な取扱いを定めた省令が公布、施行に関する通達が発出されました。さらに2018年12月には実務に影響する内容がQ&A形式にて示された改正労働基準法等の解釈に関する通達が発出されました。そこで今回は、時間外労働の上限規制に対応する際に確認しておきたいポイントを解説します。

時間外労働の上限規制

今回、時間外労働の上限となる時間数が罰則付きで労働基準法に規定されました。その時間数は原則として月45時間、年360時間であり、臨時的な特別な事情がなければこれを超えて従業員を働かせることはできません。臨時的な特別な事情があるときには、労使の合意を持って特別条項を締結することで、この月45時間、年360時間を超えて従業員を働かせることができますが、そのときでも上回ることのできない労働時間の上限が設けられました。その具体的な内容は以下のとおりであり、1~4のすべてを守る必要があります。

  • 時間外労働が年720時間以内
  • 間外労働と法定休日労働の合計が月100時間未満
  • 時間外労働時間数で月60時間を超え、時間外労働時間数および法定休日における労働時間数の合計で月80時間以下かつ、時間外労働時間数で年間720時間以下に設定
  • 時間外労働が月45時間を超えることができるのは、年6ヶ月まで

なお、この上限規制の適用が猶予や除外される事業・業務があります。

中小企業の範囲

時間外の上限規制については、中小企業に対する適用が1年間猶予されています。この中小企業の範囲は下表のとおりであり、「資本金の額または出資の総額」と「常時使用する労働者の数」のいずれかが、基準を満たしていれば中小企業に該当します。

  • 業種の確認

    業種は日本標準産業分類に従って判断することになっているため、こちらより確認することができます。

  • 資本金の額または出資の総額

    資本金の額または出資の総額を確認するときに、個人事業主や医療法人など、資本金や出資金の概念がない場合もあります。そのときには、常時使用する労働者の数のみで判断します。

  • 常時使用する労働者

    常時使用する労働者の数は、臨時的に雇い入れた労働者を除いた労働者数で判断します。ただし、パート・アルバイトであっても臨時的に雇い入れた場合でなければ、労働者数に含める必要があります。

これらを踏まえ、自社が大企業、中小企業のどちらに該当するかを確認しましょう。

上限規制の施行に伴い設けられた経過措置

時間外労働の上限規制は、大企業が今年4月1日、中小企業は2020年4月1日に施行されますが、施行に当たっては経過措置が設けられており、大企業では2019年4月1日以後、中小企業では2020年4月1日以後の期間のみを定めた36協定に対して上限規制が適用されます。そのため、例えば大企業で2019年3月1日が始期となる36協定を締結する場合、2019年4月1日より前の期間が含まれることから改正による上限規制は適用されず、次の2020年3月1日が始期となる36協定から上限規制が適用されることになります。

法違反に該当するケース

労働基準法では、原則として1週間40時間、1日8時間という法定労働時間を超える労働を禁止し、この法定労働時間を超えて働かせるためには36協定を締結し、事前に所轄労働基準監督署に届出を行う必要があります。そのため、36協定を締結・届出せずに法定労働時間を超えて働かせた場合や、36協定で定めた延長することができる時間数や休日労働の時間数を超えて働かせた場合、労働基準法第32条違反となり、6ヶ月以下の懲役または30万円の罰金となることがあります。
また、時間外労働の上限規制が設けられたことにより、36協定で定めた時間数に関わらず、時間外労働と法定休日労働の合計が月100時間以上となった場合や、時間外労働と法定休日労働の合計時間ついて、2~6ヶ月平均のいずれかが80時間を超えた場合には、労働基準法第36条6項違反となり、6ヶ月以下の懲役または30万円の罰金となることがあります。

これから36協定の締結・届出をする企業は、時間外労働の上限規制が適用される時期を確認し、締結内容が違法なものにならないように内容を確認しましょう。

参考リンク

総務省「日本標準産業分類」
厚生労働省「時間外労働の上限規制 わかりやすい解説」
厚生労働省「「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」について」

※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。